2006年11月30日

24日。朝から小平市にある武蔵野美術大学にさとうじゅんこと行く。音楽家で作曲家のクリストフ・シャルルさんが教えている、映像学科の大学院生に講義(?)をしました。以前から、シャルルさんに、大学でお話しをして欲しいと言われていましたが、やっと都合がついたので受けました。なかなか時間がなく、朝まで資料をつくっていたので、寝不足のまま何とか授業前に到着しセッティング。しかし、連休の合間で朝からだったので学生の集まりが悪い。はじめてから徐々に集まってきたのだが…。

我々がやっている活動について話した。「コンピュータの普及とさまざまなツールの氾濫によって、一見あらゆる音の表現を手にしたかのような錯覚に陥りがちだが、それらをプログラムする行為と表現との決定的な違いを見過ごすことが出来ない。我々のようなスタイルの作曲家は、記譜すると同時にプレイヤであり、それはつまりサウンドプロジェクションにも意欲を持つべきなのだ。」もちろんプロセスは大切だが、音楽家としては、音に確信を持って空気に触れさせるべきだと思う。また、電子音楽はスピーカーがないと音が奏でられない。サウンドシステムは楽器なのだ。ここに責任を持って演奏している電子音楽家はあまりいない。

私の下手な話しをしても伝わらないので、横浜美術館・グランドギャラリーで公演した「art live - sound+dance+visual vol.7」の『セクエンツィア~さひづる庭』の映像(DVD)を観ていただく。「電子音楽の作曲家でありながらミクストメディアの作品公演を行い、また、舞台芸術に数多く参加してきたのは、それは、実際に会場で音が空気に触れたときに初めて作品が生命を獲得するということでもあり、根気強いサウンドチェックをして音を編集し、そのテクスチュアの豊かで存在感のある音が作品へとフィードバックされる過程こそを大切にしている。そして必ずライヴで演奏をする。音に耳を澄ますだけでなく、パフォーマンスや美術、映像、照明など他のすべての要素と対等な関係において連綿と作品をつむぐ感覚は、あたかも 「自分=音」が自由自在な身体を獲得して時間を描いているかのようだ。」グランドギャラリーは高さ18mもある大きなスペース。残響が7秒もあるので、ほんとうは音楽を奏でられる環境ではない。しかし、この巨大な空間で音を奏でたかった。音響家、美術家、衣装デザイナー、映像作家、照明家、ダンサー、Taguchi、横浜市…そして、スタッフの皆さんの力で実現した公演。ヘッドフォンをして自分だけの世界で音をつくっていては決して実現しない。

あっという間に時間が過ぎ、授業の時間はなくなってしまいましたが、音を奏でることになりました。当初はsuaraスタジオに導入していただいた、Taguchiの新作MIT-502SoundSystemとサブウーファーを持ち込む予定でしたが、ユニットの調子が悪く断念しました(後日、開発者の石河さんが触れたところ、問題が解消されたのだが…)。システムを持ち込むことができなかったので、シャルルさんが用意してくれたBOSEのスピーカーで音を奏でることに…。ここまでこだわっているなら断ればと思うが、せっかくの機会ですし、ごく一般的に用いられることが多いBOSEで奏でたことがないので、どれだけ違うのかという興味もあった。そして、少しでも学生に興味を持ってもらえればと思った。サウンドチェックの時に、エネルギー感のあるエラー音を奏でたら、ボスッと嫌な音がしたので慌てて止める。シャルルさんが笑顔で「壊さなければ大丈夫です」と言う。あらためて、Taguchiスピーカーの威力を知る。感謝しなくてはいけない。さとうじゅんこが自身のヴォイスを使った作品を奏でる。私は『sketch 2006』のショートヴァージョンを奏でる。テクスチャがほとんど伝わらないので残念でしたが、シャルルさんがこのスピーカーでも、空気感や気配、独自のサウンドを感じることができたと言ってくれて救われる。

授業を30分も超えてしまった。果たしてどこまで伝わってるのだろうか?これまで、音を奏でて音で語ればいいと思っていたのですが、今後、こういう機会も増えると思われるので、もっとお話しを勉強しなくては…。いい教訓になった。ほとんど反応がなかったので、どうしたものかと思っていましたが、授業後にふたりの学生が積極的に話しかけてくれた。フィールドレコーディングをして、それらを素材にして、私の表現に近いことをしている学生と、皆を幸せにするために、自分を幸せにするためにヴォイスパフォーマンスをしている学生だった。そして、私の最後の音に「どうしようもなく心地よかった」「何かの気配が迫ってきて怖かった」と両極端な感想をいただき、普段、目指していることが少しは伝わったと感じ嬉しかった。音を削りシンプルにして隙間をつくり、聴く人の感性に委ねるというのが、本来あるべき音楽の姿だと思う。26日にproject suaraは横浜界隈のZAIMで、Taguchiの田口さんが主宰するON-COOプロジェクトに参加するのだが、彼らもZAIMで作品を発表するのだという。観に行きたいと思う。今後、これを機会に繋がれば嬉しい。積極的な人は好きだ。

at 23:29│コメント(2)トラックバック(0)go taneda │

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この記事へのコメント

1. Posted by KURONO   2006年12月01日 20:11
シャルルさんはお元気でしたか?
前にツアーで御一緒して、
独特な雰囲気やユーモアのセンスを
かもし出しているなーと。。
それきりになってしまっていますが、
機会がありましたらよろしくお伝え下さい。
(覚えていないかもですけどね。。)
2. Posted by go taneda   2006年12月04日 23:42
クロノさん。こんばんは。お元気ですか?
先日は『生のものと火を通したもの/闇の碧』の
作品ノート翻訳ありがとうございました。
次に繋がる公演になりました。
シャルルさん元気です。
彼はとても日本人の心を学んでいますね。
いつも見習わなければと思っています。
また、ご一緒できると嬉しいですね。

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