2007年11月

2007年11月29日

22日と24日。青山円形劇場に日韓ダンスコンタクトVol.9を観に行く。22日は去年の《ダンスが見たい!8批評家推薦シリーズ》で発表した作品「うろ」、今年の2月にイタリアで公演したproject suaraの作品「vision in black」でご一緒した神村恵さんが、24日は去年の《ダンストリエンナーレTOKYO2006》で発表した作品「生のものと火を通したもの/闇の碧」、来年の2月に青山円形劇場で単独公演予定の作品でご一緒する美加理さんが出演。

神村恵さんは「斜めむき」という作品。彼女の普段着というTシャツ、ジーンズ姿でスッと舞台に立つ。相変わらず強靭な身体をいじめている。よほどの鍛錬がないとこのような動きはできないのだろうと思う。音楽は舞台に持ち込んだカセットデッキから流すというもの。最後はグレン・グールドのフランス組曲を使う。グールドは大好きですが、舞台でピアノの旋律が流れるとそちらに意識が動く。それまで身を乗り出して観ていた人もふっと我に返り集中力が切れた感じ。なかなか難しい。これらの演出は、シンプルな作品が好きな私には奇をてらった印象を受けました。神村さんが踊りに徹した時の身体の在り方が好きです。ぜひ、またご一緒したいです。

美加理さんは韓国のヘグム奏者のカン・ウンイル氏と「TOKYO IMPROVISATION」を発表。円形劇場を楕円形にした舞台。この空間でのインプロはとても難しいと思う。音楽の全体構成が見えてこなかったので、なかなかムーブメントの構成も見えてこなかった。お互いに探り合いながらの時間は何を見出せたのだろうか。私は美加理さんの身体を感じることができたのでよかったですが、やはり、美加理さんとは徹底的に話し合って、作品を構築していきたいと感じました。美加理さんにどんどん音をぶつけていきたいと思います。今後の作品つくりが楽しみです。

この2日間で、青山円形劇場の音空間を感じることができました。天井からは、Taguchiが20年前に開発した、丸型ボディに38cmフルレンジユニットがついたスピーカーが4本。2Fにも4本セッテイングされている。座った位置の影響があるかもしれませんが、音の出所がはっきりとわかる感がありました。また、舞台の構造上、2Fにウーファーがセッティングされているのですが、低域が高いところにあると音のエネルギー感を体感できない。この難しい音空間で最高の音を奏でたいと思う。腕が鳴ります。ご一緒する音響家の宮本さんとの音つくりが心から楽しみです。音を徹底的に磨きたいと思います。

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2007年11月27日

17日。大宮駅の特設舞台に「まるきた伝統空間」を観に行く。岩手県北上市より黒岩の三舘鬼剣舞、更木の南部流更木鹿踊、下江釣子の春田打(田植踊)の3演目に触れることができました。どれも興味深く拝見したのですが、一緒に観に行ったさとうじゅんこが鹿踊りに興奮していましたが、私も人間ではない獣のような身体に魅せられました。また、公演後に仮面を取ったらリーダーを除く他の演者がすべて高校生だったのには驚かされました。鬼剣舞も中学生の演者が二人いて爽やかな空気を放っていました。若い人が伝統芸能に興味をもって取り組み、伝統を絶やすことなく引き継いでいる姿は美しい。皆、とても輝いていました。ぜひ、本場の空気感で体感してみたいと思いました。

12月16・17日には、岩手県花巻市で早池峰神楽舞納があります。何とか予定をつくって観に行きたいものです。舞踊評論家の石井達朗さんともご一緒しようと話していたのですが、ご予定が入ってしまいいけないとのこと。残念ですが、次の機会に実現したいです。

映画監督の三宅流さんが、6ヶ月もの間、岩手県で過ごし「岩崎鬼剣舞の一年」を追い続けていましたが、お話しを聞くのと映像を拝見するのがとても楽しみです。なお、この作品は12月15日に愛知芸術文化センターで上映されます。私はこの作品の整音を担当させていただきます。岩崎の鬼剣舞の身体への在り方は特別だそうです。身体表現をされている方や、興味のある方はこの作品に触れてみてはいかがでしょうか?東京での公演も決まりましたらご報告させていただきます。

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2007年11月25日

11日。2月に米ワシントンDCの国立舞台芸術センター「ケネディ・センター」で公演するラップトップオーケストラの打合せ。クリストフ・シャルルさんのご自宅に伺う。シャルルさんの参加が可能になって嬉しい。去年6月、原宿教会でラップトップオーケストラ&石川高(笙)の『1「000」 breath「s」 - 一息、千息』公演でご一緒した服部知さん、主催のフィリップ・シャトランさん、今回、初参加のATAKの渋谷慶一郎さんが集まる。途中、skypeで真鍋大度さんも参加。まだまだ作品の話しまでは進みませんでしたが、可能性の広がるとても楽しみなメンバーです。

海外公演は有意義ですが、2月のproject suaraのイタリア公演でも心配でしたが、ケネディ・センターの音響システムはどうなのか?私にとって音響システムは楽器です。音を奏でるにはアウトプットが何よりも大切。海外公演にも音響システムを持って行ければどれだけ安心なことか…少しずつ成長していきたい。

海外公演前の2月2日に、青山にあるLOUIS VUITTONでラップトップオーケストラのコンサートを開催予定です。この公演には久保田晃弘さんも参加します。詳細が決まりましたら発表します。

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2007年11月21日

10日。青山円形劇場で美加理さんと2月公演の打合せ。今後のリハーサルのスケジュールなどを細かく決める。美加理さんとのクリエーションとても楽しみです。音も身体もイメージを深く大きく持って、音と身体がシンプルにぶつかる、強度ある作品に仕上げたいと思う。タイトルも固まりつつある。進化したふたりを体感しに来て下さい。

11日。青山劇場。今日は生まれてはじめて演歌のコンサートに行きました。「石川さゆり音楽会」です。知っている曲は津輕海峽冬景色ぐらいですが、小学生の時に、地元の市民会館の公園で遊んでいたら、コンサートで来ていた石川さゆりさんが笑顔で会釈してくれたのです。いまでも鮮明に覚えていてとても印象に残っていました。いまやっと夢が叶ったような感じです。このような機会を与えていただきとても感謝しています。ありがとうございました。

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コンサートは石川さんのひとり芝居などもありましたが、歌を中心にシンプルな舞台で素敵でした。途中、20分の休憩がありましたが3時間の熱唱…ほんとうにすごかったです。このパワーやエネルギーはどこからくるのだろう。芸歴35周年とのことですがまだ49歳だそうです。私は心も身体を鍛えないと駄目なのだなと痛感させられたのでした。

アンコールで35周年の楽曲「朝花」を歌ってくれたのですが、演歌という既成概念を打ち破る純粋な唄としての魅力を感じました。貴重な時間を過ごしました。まだまだ学ぶことはたくさんありますね。

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2007年11月17日

8日。早稲田大学で講義。2日前に今回の講義「感性への問いの現在」の主である吉田寛さんと、テクノロジー評論家の吉田裕一さんに運んでいただいた、Taguchiのスピーカー・VSA1302-tw2とBJ ELECTRICの石河宣彦さんが開発したアンプ・MIT-502、スピーカースタンド。そして、私のスタジオで使用していたVSA1302-tw2と30?ウーファーを、TAを担当してくれた宮崎さん、学生の桂さん、村田さん、WARSZAWA FOURTH FLOORの音響家・宮坂竜太さん、そして、吉田裕一さんに手伝っていただきセッティング。

会場を視察していてよかった。一度、見ていると二度目は小さく感じるもの。横長の教室全体に音が均一に届くように素早くプラニング。アンプはVSA1302-tw2のためにつくらた専用アンプ・MIT-502。このアンプは4ch対応ですが、Taguchiの田口さんから伝授されたケーブルをクロス接続にしてクリアな音質をつくる。宮坂さんの的確なセッティングに助けられながら短い時間で音が奏でられる状態になる。順調です。

高域の音粒を奏で机と椅子の間を歩き回り音場を感じる。次に低域を奏でて全体のバランスを確かめる。VSA1302-tw2だで充分低域の質感は感じられるので、自宅から持ち込んだウーファーは要らない感じだ。要所要所で体感させる時に使うことにする。しかし、この横長の大きな空間に、このシンプルな音響システムで音を奏でることができるのとは、いったいどういうことだろうか…スピーカーはもちろん素晴らしいですが、アンプの素晴らしさに驚かされる。あらためてアンプの大切さを痛感する。

当初、高さの空間をカバーするために、2本のスピーカーを縦に重ねることも考えていたが、机と椅子が前から後ろに向かって高くなっているのが幸いし、スタンドである程度の高さをキープすることで、重ねる必要がなくなった。また、机と椅子が音を遮断してしまうと懸念していましたが、逆に反射板の変わりになって、音が四方から降り注ぐことになった。サウンドチェックを終え、吉田寛さんと軽く講義の進行を打合せる。

授業開始5分前から音粒を奏でる。どんどん学生さんが入ってくるなかで(150人~170人ぐらい)、微な音をどれだけの人が感じられるのかと遊んでみる。「耳を澄まし音を聴く」は私の音つくりのテーマでもある。はじめから気づいている人はいるようでしたが、ハッキリ感じられるほどになると、一番後ろの席に座っている人が、不快なのか耳を押さえている。なかなか素直な反応で逆に好感が持てる。あそこまで聴こえるならと安心もする。

私の自己紹介をする。豊かな楽器としての音響システム、アウトプットを大切にしていることなどを語り、また、音楽の枠に留まらず時空間の舞台表現をしていることを話して、横浜美術館・グランドギャラリーでの作品「セクエンツィア~さひづる庭」の公演映像をダイジェストで見ていただく。

今回は音の空気感がひとつのテーマなので、Taguchiが開発した骨電動スピーカーのために制作した、密度のあるサイン波バイブレーション作品を聴いていただく。その後で、対比となる空気を注ぎ込んだイーオリアン・ハーブのような作品を奏でる。何人かキラキラした瞳で聴いてくれている。次に北海道・旭川の山の上にある「上川神社」で収録した音と、町田市と川崎市に接した「ふるさとの森」で収録した音を聴き比べてもらう。私は空気の透明感を表現したかったのですが、このふたつのフィールドレコーディングの違いを、学生さんに質問してみたところ、求めていた答えがバッチリかえってきた。ひとつの音に焦点を当てることで、遠くの音との遠近法が生まれ、より全体の空気感をとらえることができる。学生さんの答えを聞いて、今日はここに来てよかったと…心から思った。

少ない時間のなかで、できるだけ多くの音作品に触れていただきたいので次々と音を奏でる。音を奏でる時は照明を落としていただく。やはり、耳を澄まして音を感じていただきたかったからです。具象音の作品、今年度にリリース予定の新作CDの断片、3月に開催するシンフォキャンパスコンサート「森のサカナ」のための64ch作品のステレオ版、CD「sketch 2006」のショートバージョンなどなど、私のいろんな顔を出していく。あっという間の1時間半。他にも聴いていただきたい作品がたくさんあったのですが、授業時間を少し超えてしまった。最後は慌しかったのですが、あたたかい拍手をいただきとても嬉しかった。吉田寛さんからはいい講義でしたとお褒めの言葉をいただきホッとする。

学生さんたちに何か一つでも伝わったらな…と思う。このような機会を与えてくれた吉田寛さんに感謝いたします。また、お手伝いいただいた吉田裕一さん、宮崎さん、桂さん、村田さん、そして、宮坂さんに感謝します。自身の音を奏でながら言葉を発することで、自分自身の音を客観的に感じることができ、とても有意義な時間を過ごしました。また、吉田さんのお話しで音の世界観がさらに広がり、このような機会を他でも設けることができたらいいなと思った。ぜひ、何か企画したいと思います。来月は武蔵野美術大学でも講義の予定があります。学生さんに触れられる貴重な時間。とても楽しみです。

講義の後、宮坂さんに手伝っていただき、戸塚にあるTaguchiの事務所にスピーカーとアンプを返却する。ご協力いただいた田口さん、そして、Taguchiに感謝いたします。宮坂さんありがとうございました。その後、渋谷で3月に横浜で開催するシンフォキャンパスコンサート「森のサカナ」の打合せ。私と音響家の宮本さん、デザイナーの三浦さん、そして、映像作家のmichiさんが参加。演出・構成を手がけるさとうじゅんこは参加できませんでしたが、音の構成を軸に、音響家、デザイナー、映像作家の文脈からそれぞれのアイデアを出し合う。作品全体が見えてきてさらに可能性を感じる。いい作品にしたい。

今夜は久しぶりにぐっすり眠れるだろう。

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