2009年03月

2009年03月31日

27日。両国のシアターXに名取事務所プロデュース公演のロシア現代劇上演シリーズ 第1作『「私のかわいそうなマラート」三部の対話劇』(作:A・アルブーゾフ)を観に行きました。

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舞台演劇はそんなに数多く体験していませんがとても面白かったです。たった三人の会話で1時間55分の作品を構成する。時間の感覚がなくなるほどあっという間に終わりました。昔、ロシア文学が好きで好んで読んでいましたが、混沌とした時代が多くのものを生み出していたのだと感じる。また厳しい寒さが人に何かを創造させるのだと…。本舞台での音や音楽はリアリティを求めていない。それがまた三人の空気感を身近に感じることができました。多くのことを学びました。シリーズということなので次の公演が楽しみです。

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2009年03月29日

19日。渋谷のBunlamura ザ・ミュージアムに「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代」を観に行く。毎年、父と母がパウル・クレーのカレンダーを贈ってくれるのですが、今回はチケットをプレゼントしてくれました。感謝です。展示はドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館所蔵のもので、クレーの他にカンディンスキーやシャガール、マティスやピカソなどの展示がありました。21時まで開館していて夜の美術館は落ち着いていていいなと思いました。

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カンディンスキーの即興シリーズは好きでしたがほんものを観れて嬉しかったです。ピカソは大作の「鏡の前の女」や「二人の座る裸婦」など大きなキャンバスを目の前にするとピカソのエネルギー感を肌で感じることができました。シャガールの「バイオリン弾き」の鮮やかな色彩に目を奪われる。他にマグリットやカッラの作品も印象に残りました。

クレー。小さな作品が多かったのですが、小さなキャンバスにはやさしく包むような音に満ち溢れていました。クレーの生きた時代を感じると厳しい作品ばかりを想像したくなりますが、どこかユーモラスな空気感がクレーの人柄を感じさせ、人生を大いに謳歌していたのだと思われる。今回、はじめて作品ひとつひとつの解説を丁寧に読みましたがなかなか面白かったです。解説で「通奏低音」という言葉があった色彩豊かな作品たちとは異なる白と黒の陰影のみで描かれた「毛皮を着た少年」や「明暗の研究(画架・ランプ)」も強く印象に残りました。私のなかでは新しいクレーの発見でした。いい絵画はその人の生きてきた背景を感じることができる。そんな音楽をつくり残していきたいです。

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2009年03月24日

15日。「百葉窓」最終日。本日は昼公演のみ。朝から会場入りしてオープニングから奏で全体の構成を再度見直す。中間の前半から中盤にかけて少し展開をシンプルにし、後半に入ってからのフィールドレコーディングの音を文脈的に入れかえ、最後はセンタースピーカーでメロディを語らせていたのを、小林さんや三浦さんのご意見を聞きながら低域のうねりから高周波が一本残り外の音と交わるような構成にしました。

センタースピーカーは130mmの平面ユニットを12発デザインしたもの。本作品では時空の切りかえ時の具像音や川村祐介さんのトランペットのボイスなどを奏でました。リアルな音がそこに存在しました。

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さとうじゅんこもマルチトラックの歌作品や玩具のキーボードで奏でた音の質感を時間軸で変え、てんとう蟲(楽器)の音色をリアルタイムでどんどん動かし試しています。この音響システム、この音響デザインで奏でることができほんとうに幸せです。田口さん、小林さん、on-coo、taguchiに感謝いたします。とてもとても贅沢なことです。また三浦さん、岸本さんには音つくりに集中させていただき感謝しています。開場まで音つくりに集中。ぎりぎりまで音を磨き上げる。

開場の準備中に小林さんがテキサスで収録してきた鳥の鳴き声を奏でる。朝方3時頃に窓を開けると何万羽という鳥が鳴いていたそうです。すごいエネルギー感。時々通り過ぎる車の音によって巨大な場が目の前に現れます。開場後も奏でていただくことでお客さまもリラックス…小林さんは全体を観てくれています。下記は小林さんがプラニングした18本のスピーカーのためのアンプたちです。

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本番。4回目の公演で外の音と競演し楽しみながら演奏でき作品は高まりました。最後は高周波が小林さんの鳥へ…そして外の音へと溶け合いました。最後まで全体の構成を再構築してよかった。いつも1回目の公演からできていたらと思うがこれもライブの面白いところです。昼の公演は新鮮で面白かったです。いつも会場を締め切り照明を落とし静かな場をつくり音を奏でていましたが新しい発見でした。次は野外公演にも挑戦してみたいです。

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今日はフルートの木ノ脇道元さんやアンサンブル・ノマドのディレクターの佐藤紀雄さんが聴きに来てくれました。作品を気にいっていただけたようで…いつかご一緒できるのを楽しみにしています。また本作品でトランペットのボイスを提供していただいた川村さんも聴きに来てくれました。川村さんのボイスは本作品のキーになりました。ご一緒した音響音楽詩「PARADISO」では私の問題で作品として成立しなかったのでいつかリベンジを…。また私のCDを取り扱ってくれているウィ・ディストリビューションの山崎さんが低域の出入りの切れ味に感動していました。他に映像作家の甲斐さやかさん、ダンサーの贄田さんや坂田さん、長濱さんなどお姿も…ご来場ありがとうございました。

あっという間の三日間でした。平面ユニットのみで構成されたon-coo独自の7.1(7.5)chシステムで、いまこの場でしか体験できない音作品をつくることができました。今後、このメンバーでさらに高めていきドルビージャパン殿とも深く繋がっていければと思います。またZAIMの202号室が音と美術で心地いい空間に生まれ変わり嬉しかったです。

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いつも新しいことに挑戦する気持ちを忘れずに続けていきたいです。ただ課題もたくさんありましたので、次回は皆で企画からしっかり打合せを重ねてプロセスも楽しみたいと思います。すでに来年度の構想もあります。今後のon-cooの展開を楽しみしていてください。

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2009年03月19日

14日。「百葉窓」公演の2日目。本日は昼と夜の2回公演です。朝から会場入りして昨日の課題をひとつずつクリアにしていく。フィールドレコーディングの音に関してはいま一度ひとつひとつのファイルに細かくボリュームをつけて録音時に体感したウェーブの実現と自身のバイブレーションを反映させていく。

またフロントのメインスピーカー2本とサイドの2本のバランスを細かく調整。サイドは左右に繊細にパンをコントロールして自然なゆらぎを生み出す。フロントは大胆に攻める。サイドスピーカーは60mmの平面ユニットを18発デザインしたもので、縦が長く(背が高く)高いところから低いところまでしっかり音をカバーできる。そしてスピードはもちろん豊かな中域が立体音響を実現する。とてもよくなってきた。

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人は後ろからの音に慣れていませんがバックの2本はサイドと同じスピーカーをセッティングしさらに空間を深いものへと導く。

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昼公演。窓の外を眺めながらの演奏。心地いい。昼間は外の音が豊かで自身で奏でているような気持ちになる。この場(会場)でしか実現しなかった作品です。昨夜の夜公演とは異なり大胆に奏でられる。客席も左右上下に配置することでお客さまもリラックスして楽しんでいただけたようです。アンビエントスピーカーは小林さんの演奏で息吹を…三人の演奏はとても楽しい。昼公演は音も美術も手応えを感じる。

夜公演。昨夜の公演をから学び、窓を3分の2包んでいた薄い幕を3分の1にして、客席も交互にしてお客さまにリラックスして音を楽しんでいただける空間つくりに徹する。ロンドン公演の直前にもかかわらず作曲家の笠松泰洋さんが駆けつけてくれる。またtvk(テレビ神奈川)コミュニケーションズの石渡さんが取材に来てくれる。いつも素晴らしい映像を撮ってくれます。感謝しています。

夜は外からの音がほとんどなくとても静かになったので密やかに音を奏でたいと思う。本番。なかなか空気が動かないので、フィールドレコーディングの音を少しずつ強くしてしまい音の気配が消えてしまう。本作品は夜の公演はほんとうに難しいと感じる。さとうじゅんこも納得がいかない様子。最後も箱庭と外の世界がとけ合わずどうもしっくりこない。

公演後にあらためて全体の構成を見直すことにする。中盤と後半はもっとよくなるはずだ。明日は最終日で昼公演になります。最後の最後まで少しでも高めていきたいと思う。

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2009年03月18日

13日。本番当日。朝から会場入りして音つくり。ワークインプログレスでの小林さんとのリハーサルを生かしてどんどん音を構築していく。小林さんとは4年ぶりですが…ご一緒できてほんとうに光栄です。小林さんには不可能なことがないぐらい。いつも冷静に全体を観てくれています。今日は雨。昼間は外の音がたくさん入ってきて面白い。さとうじゅんこもリアルタイムでいい音をつくり絶妙なタイミングで奏でる。はじめてのラップトップデュオを楽しみたいと思います。ゲネプロまでに集中して音つくり。

16時。ゲネプロ。三浦さんと岸本さんに客席に座って聴いていただく。途中、雨で濡れた道を車が通りすぎる音が聴こえ演奏が終わると汽笛が聴こえた。オープニングの曲は高められてきたと感じる。低域は立ち上がりだけではなく引きもけた違いのスピードを体感。楽しい。メインのウファー2本に加えてバックにも丸型で直径250?の平面ユニットのウファーを2本プラニング。メインのウファーよりもエネルギー感は強い。

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他はまだまだできることがたくさんあると思う。まだ本番まで時間があるので磨きたい。三浦さんも岸本さんもギリギリまで黙々と空間つくり。ほんとうに頼もしい。ふたりがいることで安心して音に集中できる。

皆で会場を整え開場の準備をする。客席は18台のスピーカーに包まれるように真っ直ぐに並べる。私とさとうじゅんこ、そして小林さんは客席の後ろにやはりスピーカーに包まれるように座る。受付にはBJ ELECTRICのアンプ・SM-P1と船を感じさせる反射版がついている八角形の木のボディの平面スピーカーをから鉄のガムランが奏でられる。ほんとうにいい音です。

開場。映像作家のmichiさん、振付家の香瑠鼓さん、ダンサーの能美さんや軽部さんが聴きに来てくれている。開演。小さな3つの灯りが消え音を奏でる。夜になると箱庭に外の音があまり入ってこない。窓の外も視覚情報がなくなり少し緊張した雰囲気になる。

前半はいい音を奏でられましたが、全体的に音のボリュームが大きくなり大味になる。フィールドレコーディングの作品は特に密やかに気配を感じ奏でなくては面白くない。フィールドの音には不可欠なアンビエントスピーカー。20面体以外にフロントに木のボディのREXを2本。

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そしてバックには紙のボディのREXを逆さにした2本をプラニングして音の空気感を実現させているのだが…。

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聴かされると疲れるだけだ。気配を奏でないと外の音とも交わらない。後半も大胆に動かせられず課題だらけの演奏となった。また客席も横並びだったのでお客さまもリラックスできない感じでした。やはり本番は本番の難しさがある。ワークインプログレスを行いましたが会場での音つくりやリハーサルにはもっと時間が必要だと痛感しました。前回の「森のサカナ」では会場リハーサルだけで4日間も要したので…当然か。明日は昼と夜の2回公演。明日までに音も美術も改善するために公演後に皆で残って見直す。

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